建物ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?
製品やサービスが誕生してから廃棄・リサイクルされるまでの全工程において、環境に与える影響を定量的に評価する手法である。
建物の設計、材料調達、資材製造、運搬、施工、維持管理、改修、解体・廃棄に至るまでのすべてのプロセスのCO2排出量を算出し、建物単位で評価する。
■建物ライフサイクルアセスメント(LCA)が注目される背景
建築物のCO2排出は、世界全体の排出量の約37%を占めており、その内訳は次のとおりである。
【建築物のCO2排出量の内訳】
・建物の使用に伴うエネルギー消費(オペレーショナルカーボン)約27%
・建材の製造・施工・解体などに伴う排出(エンボディドカーボン)約10%
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、従来の環境評価に用いられているオペレーショナルカーボンに加え、エンボディドカーボンの削減が注目されている。
そのため、建物の環境負荷をライフサイクル全体を対象として評価するLCAの重要性が高まっている。
■ライフサイクルアセスメント(LCA)導入で期待される効果
①長寿命建物の評価
建物の耐用年数を延ばすことで、単位年数あたりの環境負荷が軽減される。
②省エネ・省資源設計の見える化
断熱性能の向上や自然エネルギーの活用が、定量的に評価できる。
③エコマテリアルの活用促進
リサイクル材や低炭素建材の採用効果が明確になり、採用の判断材料となる。
④ESG対応・サステナブル経営への寄与
LCAに基づいた環境情報は、投資家や消費者への信頼性の高い情報提供につながる。
とりわけ、不動産開発や公共工事では、ライフサイクル全体での環境配慮がプロジェクト評価に組み込まれつつあり、LCAの導入は企業の競争力向上にもつながる。
■日本独自のLCAツールについて
2024年に日本の建築実務に適したツールが公開された。
ツール名:J-CAT(Japan Carbon Assessment Tool for Building Lifecycle)
国土交通省は、2028年度からLCAの算定・開示を促進する制度を導入する方針を示し、公的建築物での先行導入も進めている。
