2025年10月31日(金)配信
これからの建設業政策の方向性について議論する「今後の建設業政策のあり方に関する勉強会」というものを国土交通省が今年から開催しています。
今年6月に第1回が行われ、10月までに3回開催され全て議事が公開されているんですが、この中に建設工事の「請負」について興味深い記載があったので紹介したいと思います。
第1回の勉強会で、「請負という考え方に関する意見」として以下のような記載があります。
「現在議論されている労務費の確保や物価上昇の価格転嫁といった取組は民法上の請負契約からはみ出ているのではないかと考えており、建設業法が前提とする請負という考え方をどのように考えていくか整理が必要。 」
いま国交省は、労務費の行き渡りや資材高騰の価格転嫁を建設業法を改正していろいろ規制しようとしていますが、これが民法の請負っていう契約形態からズレてきているんじゃないかって話ですね。
「労務費はこの金額以下にしちゃいけない!」
「資材が高騰したら受注者に価格転嫁してあげなきゃダメだ!」
こういったことを法規制するなら、そもそもそれって請負なの?まあ、要するに極端に言えばそんな主旨でしょう。
さらに第2回の勉強会では、同じように「請負」についてこんな意見が出ています。
「コストプラスフィー契約や材料供給契約等への射程を考えた時、建設業法において建設業は請負だと言う定義のままで良いのか。」
(コスト・プラス・フィー契約とは?)
https://www.rise-jms.jp/media/kensetsu_news/a1356ここに出てくる「コスト・プラス・フィー契約」って、「実費精算」で行う契約のことですから、工事が始まる前に請負金額を決めるんじゃなく、工事で実際にかかった費用をそのまま発注者に請求し精算していく契約方式のことです。
まあ要するに実費精算だから、資材が高騰しても高騰した値段で精算するし、労務費はかかった分だけ精算するってことで、受注者はその実費と別に自社の利益を上乗せするので、リスクは殆どない契約です。
こういう契約形態を「射程」と言ってるわけですから、工事を総価契約の請負とかじゃなく受注者負担の少ない実費精算型みたいな契約を、勉強会としては将来的なイメージとしているんでしょうね。一度請け負ったら完成までずっとそのままの金額で行く、ではもう工事会社は存続できないだろうと。
そう考えるとやっぱり、「建設業は請負だと言う定義のままで良いのか。」って話になるんだと思います。
建設工事といえば請負。何十年と続いたそれを根底からひっくり返すような議論が国の勉強会でなされています。建設業、やっぱり今は大変革期ですね。