#073 「下請け」って言葉は消える!

カテゴリ
建設企業向けメールマガジン 
タグ

株式会社ライズ

B!
2025年7月15日(火)配信


来年2026年に下請法が改正されますが、皆さんご存じでしょうか?


下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」。
中小零細企業や個人事業主が、大手企業や規模の大きな企業の仕事を請け負うときに、
不利な取引条件を押し付けられないことを主な目的としています。


その下請法改正の中で、注目されている内容の一つが「下請け」という言葉の廃止です。


これまで法律や法令、ガイドラインで使われてきた「下請事業者」「親事業者」といった言葉が、
改正後には「中小受託事業者」「委託事業者」に置き換わります。
(これはこれで分かり辛い気もしますが・・・)


また法律の名前そのものも「下請代金支払遅延等防止法」から
「中小受託取引適正化法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)」
に変更され(な、ながい…)下請けという言葉を一掃する形です。


元請と下請という上下関係のイメージを払拭し、
中小零細会社を尊重する取引を確立することが改正の狙いです。


ただ、この改正下請法は「建設工事」には適用されません。


建設工事は従来から下請法の対象外とされ、別途「建設業法」で管理されています。
建設業法では「元請負人」「下請負人」という言葉が使われており、
これを廃止するには建設業法の改正が必要ですが、
昔から業界内で定着してきた「元請・下請」という言い方をいきなり変えるのは結構難しい感じがしますね。


それでも昨今は、元下間の取引において「協力会社」や「パートナー」といった呼称も増え、
いわゆる上下関係をイメージさせない言葉を使う会社も増えてきました。


改正下請法を審議した国会議員の一人も国交省に対し「建設業法においても、
同様に“下請け”という用語の見直しを検討すべきではないか?」と問い質していますが、
同省の幹部も「建設業界の意見を聞いたうえで、見直しについて必要な検討を行う」と言っています。


まあ正直、この流れじゃ建設業法も「下請け」って言葉を消すしかないでしょうね。


仮に建設業法がこのまま改正されず、現行の「元請負人」「下請負人」という言葉が残り続けた場合、
世間から「なぜ建設業だけ“下請け”を使い続けるのか」という批判が起きるでしょう。
おそらくSNSでもやり玉にあがって「どうして建設業だけ?!」「建設業だけ遅れている!」
「建設業だけ昭和!」などいった声で炎上するのは必至でしょう。


でも逆に、建設業法でも用語が改められれば(契約書類の変更やガイドラインの書き直しなど現場の手間は増えますが)
業界全体が時代の流れに合わせてイメージを刷新するチャンスにもなるかもしれません。


何れにせよ最終的にどうなるか分かりませんが、建設業だけこの変化に無関係ではいられないのは確かです。
国が、下請法(したうけほう)を取適法(とりてきほう:中小受託取引適正化法)と名称を変えてまで
下請けの立場を確立しようとしているのに、建設業だけ蚊帳の外にはいられません。


建設業法がいつ改正されるか分かりませんが(されないかも知れませんが)、
下請法の改正は来年2026年からですから、それから何年も建設業界だけ「下請け」って言葉を使っているのは、
めちゃくちゃ「浮く」でしょうね。


建設業の「下請け」って呼称、いつまで続くのか注視したいと思います。


建設企業向け ✉️ メールマガジンは、
建設の時事ネタを中心にニッチな情報をお届けしています。

以下フォームよりお申し込みいただければ、
ほぼ隔週で最新のメールマガジンをお送りします。

▶ https://www.rise-jms.jp/mailmagazine_form.html

関連記事

#072 ゼネコンは初任給の引き上げ合戦!

2025年6月18日(水)配信中堅ゼネコンの淺沼組が、今年4入社の大卒初任給を30万円に引き上げたというニュースがありました。外勤者ということなので施工管理職に限定したようですが、前年の27万2000...

#071 若者を採用するならエージェント!

2025年6月3日(火)配信いま、就職や転職をする人の多くが「エージェント」を使っていることを知ってますか?まずはこちらのデータをご覧ください。▶仕事探しはエージェントの時代https://www.r...

#070 残業上限「緩和」の声ひろがる!

2025年5月20日(火)配信群馬県建設業協会が、会員企業のアンケート結果を受け「建設業の残業上限の緩和」を求めていると以前書きましたが、その声が広まっているようです。3月14日の衆院国土交通委員会で...

#069 設計変更、大学教授が事前チェック!

2025年5月8日(木)配信国土交通省が、工事の設計変更について「第三者」を入れてチェックする事にしたみたいですね。「設計変更過程の透明性を確保するため、変更前に国交省と業者以外の第三者に適正性をチェ...

#068 建設業の「口頭契約」トラブル多いです!

2025年4月23日(水)配信建設業は、文書を交わさない「口頭契約」が未だ多いようですね。軽微で急ぎなものはともかく、そこそこ金額が大きくなっても口頭契約で済ませるさまは、他業界から見れば違和感しかな...

#067 職人の賃金は国が確認します!

2025年4月9日(水)配信国土交通省が、建設業で働く職人の賃金を直接確認する作業を始めるみたいですね。国交省は職人の賃金の「見える化」をするために、今年度(2025年度)各地方整備局で試行工事を始め...